「観光・保養のためのロングステイ」というビザがあります。2015年にできた新しいビザでまだ十分に知られないんですが、最近時々聞かれるようになってきました。お手続きの依頼も増えてきたので、解説します。
目次:
・ロングステイビザの概要
・ロングステイビザをとるための条件
・ロングステイの申請方法
・ロングステイでできること
・ロングステイのご依頼
・ロングステイのよくあるご質問
ロングステイビザの概要
ざっくり言いますと、3,000万円以上という多くの資産をもっている、いわゆるお金持ちの外国人の方が日本を観光して回るような活動をするためのビザです。
基本は通常6ヶ月で1回延長できますので、最大1年を日本でゆったりと過ごしていただます。
- 会社を退職してまとまったお金ができたから、昔から好きだった日本全国を観光して回ってみたい。
- FIRE(Finacial Independence and Retirement Early)したので、冬は北海道でスキー、夏は沖縄でダイビングなどして日本で気ままに暮らしたい。
- 子どもが日本に留学することになったので、せっかくなので私たち夫婦も日本という国で暮らしてみたい。
など、いままでこのビザをご依頼いただいた方は、みなさん日本が大好きで、経済的に豊かな方でした。
日本に観光旅行に来られる外国人の方は、通常は観光目的の短期滞在ビザ(いわゆる旅行ビザ)で来るのがふつうです。ただ、経済的に豊かで長期間日本に滞在したいという方には、特別にこの「観光・保養目的のロングステイ」が新たに作られました。
在留資格の種類としては「特定活動」になります。パスポートに「指定書」というが付きますのでそれをみれば「観光・保養のためのロングステイ」だとわかります。(特定活動告示40号)
名前が長いので、ここでは単に「ロングステイ」ビザといいますね。
ぜひ、経済的に余裕があって、日本の歴史や文化、観光に興味がある外国人の皆さんには、旅行ビザよりも長く滞在できるこのロングステイビザをご検討いただけたらと思います。
ロングステイビザの条件
ロングステイビザをとるには、大きく4つの条件があります。
1.国籍がビザ免除国であること
2.年齢18歳以上であること
3.3,000万円以上の預貯金があること
4.海外旅行損害保険に入っていること
です。詳しく説明していきますね。
1.国籍がビザ免除国であること
「ビザ免除」の国は、世界に68カ国・地域(2020年12月時点)ありますが、多くは先進国です。こちらから確認してください。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/tanki/novisa.html
2.年齢が18歳以上であること
外国人富裕者層が日本で観光などをして滞在し、日本での消費を通じて「お金を落としてもらう」ことを狙ったのがこのビザです。年齢は18歳以上とされています。
年齢は日本でいう満年齢を基準にします。生まれて1年間は0歳として数えます。いわゆる数え年(韓国や中国)ではありません。
3.3,000万円以上の預貯金があること
3,000万円の基準は、「日本円」換算の「預貯金」になります。
外国のお金での預貯金でも構いませんのが円換算で3,000万円ですので、その時点での外国為替レートをしっかり確認してください。3,000万円ギリギリの場合は、為替レートが変わると円安で基準を満たさなくなってしまう可能性もあります。
また、「預貯金」は銀行の預貯金通帳などで証明します。これは過去6ヶ月間の収入支出明細がわかる必要があります(一時的に借りてくるだけの「見せ金」等は厳禁です)。最近はネットバンクも多く通帳がない場合は、ネットバンク画面で名義人と明細がわかるようにしましょう。
株式・債権・暗号資産などは資産価値が変動するするので通常は預貯金としはみられないようですので、現金の預貯金に取り崩しておく必要があります。
また、この3,000万円は夫婦の預貯金を合算して計算できます。
4.海外旅行損害保険に入っていること
死亡や病気・ケガを保障する海外旅行傷害保険の証明が必要で、6ヶ月間の滞在予定期間の全期間をカバーしている必要があります。ネットなどで簡単に契約できますが必要書類になります。
ロングステイビザの申請方法
では、ロングステイビザの申請方法について具体的に説明しますね。
海外から申請する場合
これは、日本に来る前に海外でロングステイビザを申請する場合です。その国の「日本大使館領事部・日本領事館」でビザ申請してください。
・パスポート
・ビザの申請書(証明写真)
・滞在予定表
・過去6ヶ月間の支出入がわかり、現在3,000万円以上の残高がある預金通帳の写し
・死亡、ケガ、病気の海外旅行傷害保険で、予定滞在期間をカバーするもの
なお、自分の母国以外の国から申請する場合は、その国に住んでいるか仕事があるなど長期滞在していなければ申請できません。
ただ、もし在留資格認定証明書を先に日本でとって外国でビザ申請する場合は、
・パスポート
・ビザの申請書(証明写真)
・在留資格認定証明書(すでに日本で取得済みの場合)
の3つのみになります。
日本滞在中に申請する場合
旅行ビザで日本に滞在している外国人の方が、さらに長く日本にいたいためにロングステイビザを申請する場合などがあります。
この場合は、
・パスポート
・在留資格認定証明書交付の申請書(証明写真)
・滞在予定表
・過去6ヶ月間の支出入がわかり、現在3,000万円以上の残高がある預金通帳の写し
・死亡、ケガ、病気の海外旅行傷害保険)で予定滞在期間をカバーするもの
をそろえて、日本の入管(入国在留監理庁)に申請します。
これが許可されて認定証明書が出た場合は、日本滞在中でそのまま旅行ビザからロングステイビザへ変更することもできますし(滞在理由が必要)、いったん持ち帰って改めてロングステイビザで来日することもできます。
ロングステイビザでできること
観光・保養などの目的
・日本全国を観光して回ること
・日本で保養すること
また、次のようなものも含まれます。
・アマチュアスポーツや競技を楽しむ
・知人や家族親族と会ったり一緒にすごす
・娯楽
・神社などの宗教施設を参詣する
・私塾やセミナーなどに参加する
こうした収入や報酬を伴わない活動をして日本で過ごすこができます。
また、このビザは「短期滞在」の旅行ビザと同じく、「資格外活動許可」をとってアルバイトをすることはできません。
夫・妻は一緒でもOK、子どもは不可
夫・妻など配偶者も一緒にくることができます。ただ、子どもは一緒に連れてくることはできません。これは注意しないといけません。
配偶者がずっと同行する場合
配偶者(夫・妻)が、ロングステイビザ(特定活動40号)を持って日本に来る場合に、それに同行する場合は、ロングステイの同行配偶者ビザ(特定活動41号)をもらうことができます。
このときは、
・パスポート(証明写真)
・申請書(ビザもしくは在留資格認定証明書)
・夫婦の関係を証明する資料(結婚証明書等)
・滞在予定表
・死亡、ケガ、病気の海外旅行傷害保険)で予定滞在期間をカバーするもの(個別に必要)
になります。同行配偶者の場合は、二人で3,000万円の預貯金で足ります。
ただ、「同行」はかなり厳しく見られると考えましょう。日本で別居したり、別々の観光場所に旅行したり、別々の場所に滞在している場合は「同行」とはいえず、それぞれ「単独」でロングステイビザをとらなければなりません。
また、同行配偶者は、結婚していることが前提ですので、事実婚・同性婚などで法律上の結婚状態にない場合は、原則として「単独」でロングステイビザを取る必要があります。
配偶者が単独でロングステイビザを取る場合
結婚している配偶者と一緒にロングステイビザを取る場合でも、別々に行動するような場合はそれぞれが単独でロングステイビザ(特定活動40号)をとらなければなりません。
その場合は、二人で6,000万円の預貯金があることを証明します。
この場合も夫婦間は合算できるので、たとえば夫の預金が6,000万円あることを証明すれば、二人それぞれに単独のロングステイビザ(40号)をとることはできます。
ロングステイビザのよくある質問
Q当初は基準の3,000万円だったけど途中で円安になって基準を下回った。ビザはキャンセルされるのか?
いいえ、この場合はキャンセルされません。また、活動の内容が変わっていなければ更新も可能です。
Q夫婦で一緒に半年日本に来る予定ですが、その間私は北海道でスキーを、夫は東京で観光をする予定です。この場合は同行として3,000万円の預金で足りますか?
この場合は、数時間から1日の買物などで別行動ならともかく、数日以上別々の場所で活動したり宿泊・滞在するような場合はもはや「単独」行動となると思われます。
単独の場合、別々にロングステイビザ(特定活動40号)をとらなければなりませんので、二人で6,000万円の預貯金の証明が必要です。ただし、夫の預貯金が6,000万円あれば、奥さんの預貯金はなくても大丈夫です。
Q日本の高校にスポーツ留学している息子が心配で、私が一緒に住んで面倒をみるため観光や保養が目的ではないのです?
観光や保養は例示なので、その他収入を伴わないような活動も大丈夫です。日本に住む家族を訪問して一緒に生活したり、子育てや家事の手伝い、日本語や日本文化を学ぶなども可能です。
Qロングステイビザで日本にいる間は、日本の国民年金に加入して年金保険料を支払わなければなりませんか?
年金保険料を支払わなくてもよいです。
90日以上のいわゆる中長期滞在外国人の方は、原則年金への加入が必要ですが、「観光・保養のロングステイビザ」、「医療滞在ビザ」の外国人については、国民年金に加入できないことになっています。
年金事務所・市役所に「国民年金第1号・第3号被保険者適用除外届」を、在留カードとパスポートの指定書とあわせて提出してください。