就労ビザを外国人が取得する際には、学歴がとても重要なります。
ここでは、就労ビザと学歴の関係について解説します。
(目次)
就労ビザと学歴要件
学歴がもっとも重要となるのは、俗に「一般就労ビザ」とよばれる「技術・人文知識・国際業務」のビザ(在留資格)です。これは1つの種類のビザ(在留資格)ですが、技術、人文知識、国際業務でそれぞれ必要とされる学歴、会社でできる仕事が異なります。基本的には、大学を卒業して学位(学士号、修士号、博士号)を取得している人が対象となります。(学歴がない場合は、下の職歴で基準を満たすことになります)
日本の就労ビザは、そんなに学歴にうるさいんだとはよく相談者の方からも驚かれますが、前提として日本で働く外国人は「高度な知識・技術をもった外国人のみ日本で就労できる」という建前が大前提なので、「学歴」は非常に重視されています(*技能実習や特定技能は除く)
大学・大学と同等以上の学校を卒業
「大学を卒業していること」の要件ですが、これは単に学校を卒業したということではなく、「学士号」または「短期大学士号(準学士号)」を取得したことを意味しています。学校を中退した場合はもちろん卒業をしていても「学士号」「準学士号」をとっていなければこれにあたりません。当然、審査の際の必要書類として「学士号」「準学士号」を取得したことの証明が求められます。
ただし、大学でなくとも「大学と同等以上の教育を受けたこと」にあたる場合があります。これには、いわゆる「高等専門学校(高専)」卒業者、水産大学校、航空大学校、海上保安大学校、防衛大学校などの大学校卒業者、文部科学大臣指定外国大学日本校(テンプル大学ジャパンや北京語言大学東京校)などがあります。大学から飛び級で大学院に進学した場合もこれにあたります。
外国の大学を卒業
外国の大学を卒業した場合は、注意が必要です。日本の大学とは教育制度が全く異なることがよくあります。あまり聞き慣れなく国の場合は、その国に教育制度を確認した上で、日本でいうところの「学士号(Bachelor Degree)」に相当する学校であるのかを吟味します。あとは、卒業証明書と成績証明を取り寄せて、修業年限や取得単位科目名などで入管に説明する場合もあります。
よく問題となるのが、中国人が中国の大学を卒業した場合です。国によっては、大学という名前の学校であっても「学位」がでない学校があったり、そもそも国の認可等をとっていない学校があったりしますので注意が必要です。例えば、大学(学院)、専科学校、短期職業大学は日本の大学卒業に該当するといわれますが、大学専門部には2年制や3年制に学校があり学位は与えられない場合、大学は卒業したものの学位認定試験を受けておらず学位が与えられていない場合などもあります。このような場合は要件にあてはまらないこともありえます。
日本の専門学校(専修学校の専門課程)卒業
さらにややこしいのは「専門学校卒業」です。注意すべきは「本邦(日本)の」という点で、日本にある専修学校の専門課程であることが要件です。また、法務大臣告示によって「専門士」あるいは「高度専門士」の学位がもらえる場合に限られます。
ちなみに、専修学校と専門学校は違います。ちょっとだけ定義しておくと、一般の人がよく「専門学校」といっている学校は、おおまかに①専修学校、②各種学校、③無認可学校に分けられます。さらに、①専修学校は、①-①専門課程、①-②高等課程、①-③一般課程に分かれます。この①-①(専修学校の専門課程)がいわゆる法律上の「専門学校」になります。逆に言えば、たとえ「◯◯専門学校」と名乗っていても、①-①(学校教育法124条による都道府県知事認可)でない学校は、法律上の「専門学校」にはあたりません。
日本に留学している留学生の中にも、多くの人が専門学校と呼ばれる学校に通学している人が多いですが、上のように専修学校の専門課程であって「専門士」や「高度専門士」をとっていなければ、就労ビザが許可される可能性は少ないということになります。
ときどき質問されるのは、日本の専修学校の専門課程を、「通信教育」で外国(例えば中国やインド)で勉強して卒業した場合はどうかというものですが(なるほどビジネスモデルとしてありえそうですが)、これは「本邦の」にあたらずダメです。また、海外の専門学校も「本邦の」にあたらずダメということになります。
学歴がさらに有利になる場合(高度専門職)
通常は、大学を卒業していれば、学歴要件としてクリアすることが多いと思います。あとはお仕事の内容との関連性や給与額など他の要件を検討して下さい。
これとは別に、特に学歴の高い人には「高度専門職」ビザ(在留資格)において、有利になる場合があります。高度専門職ビザとは、年齢・学歴・年収・勤務先会社などにおいて「特に優秀な外国人人材」について、様々な特典をつけた特別のビザ(在留資格)です。
たとえば、教授や研究職の仕事でとれる高度専門職第1号(イ)や会社従業員でとれる高度専門職第1号(ロ)では、70ポイントをクリアする必要がありますが、最終学歴が博士号の場合は30ポイント、修士号・専門職学位(法科大学院やMBA取得者)は20ポイント、大卒者は10ポイント、がもらえます。外国人経営者の場合の高度専門職第1号(ハ)では、MBA・MOT専門職学位で25ポイント、博士号・修士号・その他専門職学位で20ポイント、大卒者で10ポイントがもらえます。
高度専門職では、学歴ポイントと年収ポイントの2つが特にポイントが高いので、学歴がある方はぜひチェックしてみてください。
(参照)高度人材ポイント評価の仕組み