婚姻はどうしたら成立するか
まずは、婚姻の成立の条件についてです。
外国人と結婚する場合には、まずこの規定が問題となります。
通則法を見てみましょう。
通則法24条1項
「婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。」
「各当事者」とは、夫婦となる男女それぞれの、という意味です。
「本国法」とは、国籍のある国の法律と思って一応OKです(*)。
つまり、夫婦それぞれが、それぞれの国の法律によって判断されるということです。
*アメリカのように「州」ごとに法律が違う国は、一般に州の法律によります(通則法38条3項)
ここで問題となるのはこんな場合です。
・婚姻年齢…年齢がいくつになったら結婚できるか。
・再婚禁止期間…離婚したあと、いつになったら再婚できるか。
・近親婚の禁止…親族間での結婚が許されるか。
・重婚の禁止…二人以上の者と結婚(例:一夫多妻)できるか。
基本的には、夫婦それぞれの国の法律を調査して、結婚できるかを判断します。
ただし、例外的に、重婚の禁止など外国で認められる場合でも、日本の公の秩序や善良の風俗
(公序といいます)に反すると考えられる場合には、適用しない場合があります(通則法42条)。
婚姻の手続のしかた
夫婦となりたい二人が結婚するためには、婚姻の手続きを済ませる必要があります。
(たとえば、日本では「婚姻届」さえ出せば結婚式を挙げなくても婚姻が完了します。)
この婚姻手続についても、世界各国でバラバラであるため国際私法の規定が必要です。
いったい、どこの国の法律に従って、婚姻手続きを行えばよいのでしょう。
通則法24条2項
「婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。」
つまり、原則は結婚した場所の法律に従えばOKということです。
ただし、通則法24条3項に補足があることに注意です。
「前項(24条2項)にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は有効とする。
ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、
この限りでない。」
つまり、夫婦どちらかの国の法律に従った結婚の仕方でもOKですよ、としています。
ただし、夫婦どちらかが日本人で日本で結婚した場合には婚姻届がないとダメ、です。
(これを日本人条項といいます。戸籍制度をもつ日本では届出を重視してるんですね。)
婚姻したら身分はどうなるか
では、無事に結婚できたとしましょう。
次に、結婚したら、夫婦それぞれにどんな権利を得たり、義務を負うのでしょう?
これも世界各国でバラバラなので、国際私法を見る必要があります。
通則法25条
「婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において
夫婦の常居所地が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も
密接な関係がある地の法による。」
少し長い規定になりますが、3つのヒント(連結点)が書かれています。
1.夫婦の本国法が同じ(例:夫婦二人とも中国人)ときは、その本国法
2.夫婦の常居所が同じ(例:夫婦二人ともニューヨーク在住)なら、その地の法律
3.夫婦に最も密接な関係がある地の法律
まずは1、1がなければ2、2がなければ3の順番で優先的に適用されます(段階的連結)。
ここで、「常居所」という聞きなれない言葉がでてきています。
常居所とは、法律上定められる「住所」とは少し異なる意味だとされますが、基準は不明確です。
一応、日本国内の場合は住民票(日本人)や1年以上の在留資格(外国人)に、国外の場合は
原則5年以上の滞在(日本人)や、本国での住民登録(外国人)に認められているようです。
さて、夫婦としての権利・義務にはどんなものがあるのでしょう。
・成年擬制…結婚すると未成年者としての取引上の保護がなくなるか。
・夫婦の氏の決定…夫婦どちらかの氏に統一しなければならないか。
・同居義務…夫婦は原則同居しなければならないか。
・貞操義務…夫婦は貞操を守らなければならないか。
・日常家事債務の責任…夫婦は日常家庭生活上の債務に連帯責任を負うか。
こうした問題を解決するためには、まず国際私法によって、どこ国の法律をみればよいを調査します。
婚姻したら財産はどうなるか
結婚後の夫婦に生じる効果については以上のとおりですが、財産関係に特別の規定があります。
条文も長いので、簡単にまとめておきます。
通則法26条1項
「前条の規定は、夫婦財産制について準用する。」
基本的には前条と同じです(ただし考慮すべき事情は財産的な視点から)。
しかし、夫婦の財産について書面で契約をした場合(夫婦財産契約)には、これを優先します。
・夫婦の一方の国籍国法(本国法でないことに注意!)
・夫婦の一方の常居所地法
・不動産の関しての不動産所在地法
上の3つの中から自由に選択できることになっています。
(「契約」ですから自由度が高いのですね。)
ただし、夫婦以外の人(第三者といいます)にも契約の内容を主張するためには、きちんと
契約の内容を登記しておくか、そうでなければ原則通り日本法で判断されることになります。
(これは、日本での取引の安全に配慮したものです。)